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理事長からのご挨拶

演劇の持つ力を大きく外へと広げていくこと

公益財団法人 舞台芸術財団演劇人会議 理事長 平田オリザ

公益財団法人
舞台芸術財団演劇人会議
理事長
平田オリザ

 二一世紀の最初の十年が終わり、いままた、新しい年代が始まろうとしています。
 先の十年は、「9・11」の同時多発テロで幕を開け、リーマンショック以降の連鎖的な国家経済の危機で幕を閉じました。
 日本は、失われた十年が、いつしか二十年に自動延長され、さらに、その隧道の出口は、いまだ見えそうにありません。この十年間で、かろうじて私たちが学んだことは、この失われた季節が、日本だけの力ではもうどうにもならないということ。私たちは、経済も政治も文化も、国際社会とつながる中で、どうにかしてその活路を見いだしていかなければならないということではなかったでしょうか。

 舞台芸術財団演劇人会議は、2000年三月、まさに世紀の始まりを準備するように創設されました。
 初代理事長鈴木忠志氏を中心に、私たちが掲げた事業の骨格は、以下の五つでした。

1.地域における舞台芸術活動の活性化
2.地域や国を超えた共同作業の推進
3.劇場の運営のあり方
4.舞台芸術家の教育
5.演劇祭等の開催

 これら諸事業に関して、企画、提言を行い、それを具体化するための事業を行うというのが、当財団の活動内容であり、実際、私たちはこの十年、日本の演劇界において画期的な役割を果たしてきたと自負しています。
 特に利賀村や静岡、あるいはBeSeTo演劇祭を通じて、地域と世界をつなぐ活動を大きく展開してきたのが、当財団の果たしたもっとも大きな仕事であったと思います。
 この度、設立十年を一つの節目として、微力ながら、私が理事長を引き継ぐこととなりました。また、2011年四月一日より当財団は公益財団法人となりました。


 舞台芸術財団演劇人会議は、今後も、これまでの活動の蓄積を継承しながら、より一層、発展させていきたいと考えています。特に今後の数年は、地域の劇場運営の活性化と、そのための政策提言や、実際の人材の供給、そして若手演劇人の育成に力を入れていきたいと思います。
 劇場法、アーツカウンシルの設立など、この数年は、日本演劇界にとって大きな改革の時期となるでしょう。当財団は、そこに積極的に関与し、改革を実のあるものとしていきたいと願っています。
 若手の才能自体は、おそらく勝手に育っていくでしょう。私たちができるのは、その才能が、国際社会で活躍できるだけの場を創出し、またそのノウハウを提供していくことだろうと考えています。
 何より目指すべきは、日本の演劇人の「自立」です。世界で闘える演劇人を一人でも多く産み出したい。
 いずれにしてもキーワードは、文化による地域の活性化と国際化です。この二つを、二つながらに果たすことが、本財団の使命だと思います。

 社会における芸術の役割は、大きく三つほどに分けて考えるべきだろうと、私はいつも思っています。
 一つは芸術そのものの役割。人々を慰め、励まし、時に厳しい人生と向き合わせること。私たち演劇人会議の会員は、何にもまして、この力を信じ、またその力を持った作品を持続的に創り出せる環境作りに腐心しなければなりません。
 二つ目は、コミュニティ形成のための役割。特に集団で行う舞台芸術は、どの共同体においても、それを維持するために欠くべからざる行為として、人類に継承されてきました。私たち演劇人会議が、発足当初より、地域の活性化とつながる演劇活動を提唱してきたのは、まさにこの点に拠っています。
 そして三つ目は、教育や医療、観光や福祉といったように、社会に直接、様々な具体的な効果をもたらす点です。私たち演劇人会議は、単に表現者だけの集団ではありません。他の芸術ジャンルの方たちや、研究者、経済人などが、多く参加していることが、本財団の特徴です。
 演劇の持つ力を、こうした周辺領域の方たちとともに、大きく外へと広げていくことも私たちの願いです。


 舞台芸術それ自体は、だいたい一度に百人から四、五百人、多くても千人から二千人程度しか相手にできない、きわめて小さな営みです。しかし、この不経済、非効率きわまりない行為を、なぜ人類は、綿々と伝え育ててきたのかを、2010年代に、もう一度しっかりと考えてみることは、深く意義のあることだと思います。そして、その探求と言葉の交換の中にこそ、地域社会をダイレクトに国際社会へと開いていく、一つのヒントが出てくるのではないかと私は、漠然とした希望を抱きます。
 舞台芸術財団演劇人会議は、そのような思索と対話の中から、新しい十年を活き活きと生きる道筋を探っていきたいと思います。
 どうか、多くの演劇人の参加を期待します。

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